仁と千夏と加奈のおはなし
作・Kanoguti

~登場人物紹介~
仁(じん)…男の子。15歳。この作品の主人公。地味で真面目だが、他人に騙されやすい。
千夏(ちなつ)…女の子。15歳。大家族の中で生まれ育った。自己中心的。
加奈(かな)…女の子。15歳。急に笑顔になったり、怒ったりなど、感情の差が激しい。

僕の名前は仁。
今年、高校1年生になり、××××国際高等学校に入学しました。
僕は今まで地味な性格だったから、高校生になったので、この性格を直そうと思ってます!
そしていろんな人と仲良くなれたらいいなぁと思ってます!
頑張って、この学生生活を明るく、楽しい思い出にしよう!
頑張るぞ!
今日は入学式。
クラスのみんなはどんな人が居るのか、楽しみです。

…えーっと…1年A組は……。
…ど、どこだろう…。
…こっちかな…?
…。
どうしよう。迷っちゃった…。
すると、僕の後ろから声が…。
?「…?君、こんな所で何しているの?」
振り返ると、そこにはとても可愛い女の子が居た。
仁「!!え、えっと、自分のクラスの場所がわからなくて…。」

?「クラスは何組?」
仁「えっと、1年A組です。」
?「あ!じゃあ私と一緒だね!一緒に行こっか!」
仁「あ、はいっ…!」
すると彼女は僕の手を引っ張り、一緒に1年A組の教室へ向かった。
…僕は実は女の子の手に触れるのは今まであんまり経験が無かったので、とても緊張しました…!
?「はい、ここだよ!」
仁「あ、ありがとう…ございます…。」
?「何硬くなってるの!男の子でしょ!」
仁「え、えっと…!す、すいません…!」

?「君、名前は?」
仁「す、鈴木 仁です…。」
千夏「私の名前は、佐藤 千夏だよっ!これから1年間一緒のクラスだね!よろしくね!」
仁「よ、よよよよろしく…お願いします…!」
女の子と話すのも久しぶりだったので、僕は声を震わせながら自己紹介をした。

教室の中へ入ると、もう既にたくさんの生徒が座っていた。
…視線を感じる。
…いや、確かに人が多いから視線を感じるのは当然なんだろうと思うけど…。
…なんかとてつもなく強い視線を感じる…!
その視線の方に顔を向けると、一人の女の子が僕の顔をジーッと見ていた。
こ、怖い…!!
…あの子には近づかないようにしようかな…。

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仁「その、千夏さんは、その、今日、放課後時間…ありますか…?」
千夏「え…うん。何も無いよ?」
仁「そうですか…。」
千夏「もうっ、どうしたの?急に。今日の仁君おかしいよ?」
仁「い、いつもどおりですよ…!あはは…。」

千夏「…変な仁君。」
僕は放課後、誰も居なくなった教室に呼んだ。
千夏「あ、仁君!いたいた!」
仁「ち、千夏さん…。」
千夏「なぁに?」
仁「ぼ、僕、千夏さんのことが、好きです…。」
千夏「えっ…。」
仁「つ、付き合って…ください…!」
…少し時間が止まったような気がした。
そして、再び時間が動き出した。
千夏「…いいよ。」
仁「えっ…!」
千夏「私も、仁君のこと、好き。」
仁「千夏さん…。」
僕は、永遠に彼女を守りたいと思った。
加奈「どうして仁君。仁君の事を一番好きなのは私なのに。」
加奈「一番愛しているのは私なのに。」
加奈「仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君仁君」

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仁君。私ね、本当に仁君のことが好きなんだよ。
えへへ。
仁君…好きだよ…。
好き…仁君…。
仁君…仁君…はぁっ…。
あうぅ…仁君…。
…私の人生ね。仁君のせいでめちゃくちゃになっちゃったんだよ?
毎日毎時毎分毎秒仁君の顔を見る度に、私いつも思うの。
「なんであいつといっしょにいるんだ。」
…忘れもしない昨日。
仁君、私のこと気づいてくれて、
恥ずかしかったのか、警察に通報しちゃったね。
さすがにあの時はビックリしちゃったよ。
でも、うれしかったよ…。
ほんの数秒だけど私と会話してくれたから…。
大好きだよ。仁君。

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むかしむかし、
とあるむらに、
おおきなももがひとつありました。
そのももは、さいしょはだれのものでもありませんでした。
あるひ、ふたりのむらびとがきゅうにいいだしました。
ひとりめは、
「そのももはもともとぼくのものです。」
といい、ふたりめは、
「まちがってるよ!そのももはいままでずっとわたしのものだよ!」

といいだし、ふたりはけんかをはじめました。
そこへ、さんにんめのむらびとが、ひとりめのむらびとにこういいました。
「なんであなたはいままでのわたしたちのやくそくをやぶろうとするの。
そんなこといつもいうから、あなたはきらわれるんだよ。」
そのことばをきいて、ひとりめのむらびとはなにもいえませんでした。
そこへ、ふたりめのむらびとがひとりめのむらびとにこういいました。
「そのとおりだよ。やくそくをやぶるひとに、このももをあげるわけにはいかないよ。」
そのことばをきいて、ひとりめのむらびとはなにもいえませんでした。
そこへ、さんにんめのむらびとがひとりめのむらびとにこういいました。
「ほら、おまえはもものもちぬしにはむいていないんだよ。」
ひとりめのむらびとが、
「でも、このももはもともと…。」
といったら、
さんにんめのむらびとがこういいました。
「これいじょうむらのやくそくをまもれないなら、このむらからでていけ!」
つづけてふたりめのむらびとがいいました。
「そうだ!でていけ!」
さんにんめのむらびとがいいました。
「でていけ!」
ふたりめのむらびとがいいました。
「でていけ!」
さんにんめのむらびとがいいました。
「でていけ!」
ふたりめのむらびとがいいました。
「でていけ!」
…ひとりめのむらびとは、もうなにもいうことができませんでしたとさ。

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放課後、僕は教室に居た。
みんなから僕は嫌われているようだ。
僕は何にも悪いことしていないのに…。
僕がみんなに何をした…?
なんで僕はみんなから嫌われているの?
なんで?
なんで?
…わからない。
僕にはわからない。
?「それは、お前のせいだよ。」
仁「だ、誰だ!?」
 僕の後ろに、加奈が居た。
加奈「お前が嫌われているのは、お前。自分自身のせいだ。」
仁「僕が一体何をしたんだ!」
加奈「…私、仁君のこと、好きだったんだ。」
仁「えっ…。」
加奈「…なのにお前はあいつと付き合い始めた!!」
仁「千夏さん…?…まさか、加奈さん…僕のでたらめな噂を作ったのは…!」
加奈「そうだよ。私と…。」
加奈がそう言うと、教室に誰かが入ってきた。
仁「!!!」
千夏「私、千夏だよ。」
…僕は信じられなかった。
ずっと信じていた人、千夏。
千夏と加奈、仲間。
仲間。
ナカマ。
なかま。
仁「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!」
僕は叫んだ。
千夏「私ね、加奈様に買われたんだ。
仁君に…言ったと思う。私の家族、大家族でしょ?
だから、ずっとお金に困ってたんだ。
ある日ね、私、加奈様に、『お金あげるから、仁君と付き合うのやめて。』って言われたの。
仁君。ごめんね。私、仁君よりお金の方が好きみたい。」

僕は、彼女の言っている意味がわからなかった。
理解しようとすることを拒んだ。
千夏「そのことを言われたときはさすがにひどいと思ったよ。
でもね、仁君。私たちのクラスのみんなの悪口、私に言っていたよね。」
仁「…!!」
千夏「確かに、悩みは他の人に相談するべきだと思うけど、ちょっと内容が酷すぎたよ…。
だからね、私その時から仁君のこと、信じたくなくなっちゃったんだ。」
仁「そんな…。」
千夏「そう思った後、私、加奈様にお金もらったんだ。」
仁「加奈…!」
加奈「千夏から聞いた。お前、クラスのみんなの悪口、この学校の裏掲示板に書き込んでいるんだってね。」
仁「…ああ。それがどうした!みんなしているじゃないか!!」

加奈「…ここまで言ってもまだ自分が嫌われている理由に気づかないんだね。
確かに匿名で投稿してあったから最初は誰がどの書き込みかわからなかったよ。
でも、匿名の同じIDの書き込みの内容が千夏から聞いたクラスのみんなの悪口の内容と一致していたんだ。」

仁「…。」
加奈「それでね、私、みんなにあの掲示板の仁君の書き込み、見せたんだ。」
仁「お前…!!」
加奈「そしたらみんなびっくりしてたよ!まさかあの仁君があんな人だったなんて…ね。」
僕は悪くない。
ただ真実を書き込んだだけなんだ。
だから僕は悪くない。
悪くない。
悪くない。
仁「…ぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
千夏「か、加奈様!逃げて!」
加奈「…みんな、出てきていいよ。」
仁「…!?」

目の前に、クラスのみんながいた。
いや、もう『クラスのみんな』ではない。
『敵』だ。
加奈「…みんな。あいつが敵だよ。
ずっとみんなのことをバカにしていた敵だよ。」

敵「…ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
…僕は今まで真実を言うことが、みんないいことではないなんて、わかっていなかった。
でも本当のことを言って何が悪い?
僕には、
最後まで、









…それが、彼の最後の「妄想」でした。
彼は、翌日からクラスから姿を消していました。
私は、彼のことが本当に好きだったのかな?
いや、私は最初から彼のことが好きではなかったのかもしれません。
だって、
彼は、
敵だからね。

=END=

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